四十肩・五十肩とは

四十肩・五十肩とは、肩を動かした際に痛みや動かしにくさが生じる症状の総称で、
医学的には『肩関節周囲炎』と呼ばれます。

外傷がなくても、肩関節を包む関節包（かんせつほう）という膜に炎症が起こり、その内側で線維化（硬化）や癒着が生じることで、関節の動きが制限されます。

四十肩・五十肩は、多くの場合「炎症期 → 拘縮期 → 回復期」という経過をたどります。

✅炎症期：夜間や安静時でも痛みが強く、衣服の着脱や寝返りがつらくなる時期。

✅拘縮期：痛みはやや落ち着く一方で、肩が固まり動かせなくなる時期。

炎症が治まっても、関節包の柔軟性が戻らないと可動域が制限されたままになり、「痛みは減ったのに動かない」という状態が続くことがあります。

肩関節の関節包は、関節を安定させながら動きを許容する伸縮性のある袋状の膜です。
炎症が長く続くと、その内側の滑走面が硬くなり、線維化（硬化）や癒着が起こります。

その結果、関節の中で必要な微細な滑り（包内運動）が失われ、筋肉をいくら動かしても関節が滑らかに動かない状態になります。

この「関節包の線維化・癒着」は、医学的にも四十肩・五十肩の中核病態とされ
（AAFP／StatPearls／JOSPTガイドライン）、放置すると慢性的な可動域制限を残す原因になります。

四十肩・五十肩の発症メカニズムは、現在も完全には解明されていません。

研究では、糖尿病・甲状腺疾患・長期間の不動・姿勢の偏り・加齢による組織変性などが発症のリスク因子として報告されていますが、これらがすべての人に当てはまるわけではありません。

参照：AAFP (2011), StatPearls (2024), JOSPT Clinical Practice Guideline (2020)

つまり、「老化現象」や「使いすぎ」だけでは説明できず、多くの場合は原因を特定できない（特発性）とされています。
そのため、原因追及よりも「関節包の可動性を回復させる施術・リハビリ」が改善への近道と考えられています。

「四十肩は放っておけば治る」と言われることもありますが、すべての人に当てはまるわけではありません。

多くの方では時間の経過とともに痛みが軽くなりますが、可動域の制限が1年以上続く例も報告されています。

痛みが落ち着いた後も、関節包の可動性を回復させるリハビリや施術を行うことで、再発や拘縮の予防につながります。

四十肩・五十肩の中心にあるのは、筋肉ではなく関節包の線維化と癒着による動きの制限です。
この構造を理解することで、

「なぜ痛みが長引くのか」「なぜ動かなくなるのか」──その理由が明確になります。

肩関節は人体でもっとも可動域が広く、繊細な構造をもつ関節です。

表面的な筋肉ケアだけでなく、関節包の可動性を高める施術が改善の鍵になります。
症状の背景にある「関節構造の異常」を正しく理解することが、再発予防と機能改善への第一歩です。